PACSニュース

フィルムレスPACSの運用からDICOM医用画像の解析まで。

茅ケ崎市立病院の医師ら4人を不起訴に、横浜地検

26日、茅ヶ崎市立病院(神奈川県茅ヶ崎市本村)で起きたC型肝炎の院内感染事故の発覚から約2年、業務上過失傷害容疑で横浜地検に書類送検された病院幹部ら4人が嫌疑不十分で不起訴となった。

この事故では、院内で検査器具が使い回されていた実態が明らかになったが、感染原因が解明されないまま、捜査は終結することになった。

同病院で院内感染が確認されたのは2007年11月。2006年12月~2007年4月に心臓カテーテル検査などを受けた男性患者5人がC型肝炎ウイルスに感染していることが分かった。

その後、C型肝炎に罹患(りかん)していた患者の検査後、廃棄すべき器具を、ほかの患者に使い続けていたことが発覚した。

ただ、茅ヶ崎市立病院は2008年11月に公表した報告書で「検査器具が残っておらず、感染源の特定は不可能」と結論付けた。

神奈川県警は「器具の使い回し以外に考えられない」と判断。2008年12月には「血液感染の危険性を認識しながら経費削減のために血圧測定器具などを使い回し是正措置を取らなかった」として、検査担当の技師ら(臨床工学技士1名と放射線技師2名)を書類送検した。また、「使い回しを放置した」として現場責任者である循環器内科部長の医師も書類送検した。

地検も約10か月間、捜査を継続した。しかし、検査器具が残されておらず、感染ルートは特定できなかった。

刑事責任追及の前提となる「検査と感染の因果関係」が認められず、東京高検と協議の結果、起訴見送りを決めた。地検幹部は「具体的な感染ルートが特定されなければ、医師らの過失を立証できない」と話した。

茅ヶ崎市立病院によると、患者のうち2人はインターフェロン治療でウイルスは検出されなくなり、高齢のため同治療を受けていない3人も症状は安定しているという。

茅ヶ崎市立病院経営推進課は「患者に不安やショックを与えてしまい、申し訳なく思っている。今後も治療に全力を挙げたい」としている。

自治体病院関係団体が厚生労働省や民主党に要請行動

26日、全国自治体病院開設者協議会(会長:西川一誠、福井県知事)など、自治体病院の関係10団体は東京都内で「自治体病院全国大会2009」を開催後、厚生労働省や民主党などに要望書を提出した。

要望書では、

  • 医師確保対策
  • 新型インフルエンザ対策
  • 社会保険診療報酬の改定
  • 医師の臨床研修の円滑な推進
  • 公立病院改革プラン等
  • 看護師確保対策
  • 定員合理化計画
  • 周産期医療
  • 精神科医療
  • 財政措置等
  • 高度な放射線治療の推進
について要望している。

医師確保対策としては、各都道府県に設置されている「地域医療対策協議会」を活用し、実効性を高めるような仕組みを早急に構築することなどを要望。

具体的には、「国と地方による恒常的な需給調整」や「規制的手法導入の検討」、外科、産科、精神科などの「特定診療科への緊急対応」を挙げている。

新型インフルエンザ対策では、重症化するリスクが高い人への予防や急な発熱などへの対応についても継続的な周知啓発を行うことや、医療機関の診療に支障が生じないよう医療資機材の確保や財政支援などを要求。

公立病院改革プランなどについては、各自治体病院が策定しているプランの実施に当たって、適時適切な助言指導をすることや、地方公務員の削減や給与の見直しなどを行わないことなどを求めている。

桃太郎源、「REIC遺伝子医薬」の臨床研究を来年スタート、前立腺癌や中皮腫が標的

岡山大学発のベンチャー企業「桃太郎源」は来年、日本・中国・米国で癌抑制遺伝子「REIC」をアデノウイルスベクターに組み込んだ遺伝子治療製剤の臨床試験に着手すると発表した。

桃太郎源取締役で岡山大学教授の公文裕巳氏は都内で記者会見を行い、「難治固形癌治療だけでなく、手術や放射線治療後の癌再発予防についても、開発を進めていきたい」と意欲を示した。

REICは、不死化細胞の研究から、岡山大学で独自に単離・同定された遺伝子で、癌抑制遺伝子の1種。正常細胞では高発現しているが、前立腺癌をはじめ各種の癌細胞では高頻度で発現が抑制されていることが分かっている。

REICを導入したアデノウイルスベクターを癌局所に注入した実験では、小胞体で折り畳まれていない異常なREIC蛋白質が産生され、その蓄積によって「小胞体ストレス」が生じ、アポトーシスが起こることや、細胞傷害性T細胞の誘導とNK細胞の活性化が認められている。

既に、REIC遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター製剤「Ad‐REIC」も製造されており、動物を使った安全性試験も終えている。そのため、日本・米国・中国で本格的に臨床試験を進めることにした。

国内では、岡山大学が来年から、「内分泌療法抵抗性の進行性前立腺癌」「ハイリスク限局性前立腺癌の再発予防」を適応に、「Ad‐REIC」の医師主導臨床研究をスタートさせる。

厚生労働省への研究計画書の提出も済ませており、癌遺伝子治療臨床研究作業委員会で審査中の状況にある。

公文氏は、「遺伝子治療に対する薬事行政の方針が不確定のため、国内での実用化には時間がかかる」とした上で、「当局の方針が確定するまでは、治験を実施せず、臨床研究として進める」方針を示した。

米国では、桃太郎源が来年3月から「ハイリスク限局性前立腺癌の再発予防」を適応に、第I相試験を実施する計画を立てている。第I相試験は2010年度後半には終了させる予定だ。

一方、中国では、CRO大手の「イーピーエス」が桃太郎源から「Ad‐REIC」の独占的開発・販売権を取得し、悪性中皮腫を適応に「Ad‐REIC」の開発を進める。来年、中国国内での試験薬製造や前臨床試験を開始し、11年には中国国家食品医薬品監督管理局(SFDA)に治験開始申請を行う計画だ。

アスベストの使用に関する規制がない中国では悪性中皮腫患者の急激な増加が予想されており、公文氏は「アスベストを原因とする悪性中皮腫は、日本がリードしていかなければならない治療分野」と強調。イーピーエスに導出することで、世界で唯一、遺伝子治療を認可している中国で、「Ad‐REIC」の早期実用化を図る。

さらに、桃太郎源は、提携先の日東電工が開発したポリマーを利用し、「REIC」のDDS製剤開発を行う方針だ。公文氏は、「将来的には、前立腺癌や悪性中皮腫だけでなく、幅広い癌で適応取得を目指したい」との考えを示した。

ダイナミックフラットパネルを用いた呼吸同期治療の高精度化、放射線医学総合研究所

放射線治療の高精度化のためには、放射線を可能な限り正確に腫瘍に当てることが重要です。

しかしながら、腫瘍が肺や肝臓などにある場合、呼吸の影響のために腫瘍の動きが大きく、ときには2cm程度になることもある。

放射線医学総合研究所(文部科学省所管の独立行政法人)では、この呼吸による腫瘍の動きを最小限に抑えるため、患者体表面の動きにより呼吸の状態を観測し、呼気のタイミングに合わせて照射する「呼吸同期照射」を行っている。

しかし、最近の研究により、体表面の動きと腫瘍の動きが必ずしも一致しない場合もあることが分かってきた。

また、特に、重粒子線は線量集中性が高いために、腫瘍位置の誤認が治療効果に与える影響が大きい。

このため、体表の動きに頼るのではなく、照射中にX線透視により直接腫瘍の動きを観測し、その動きに同期して照射するシステムが望まれる。

そのようなシステムはすでに存在しますが、そこでは、用いられる撮像装置の性質上、画質にボケや歪みがあったり、またX線を連続的に照射するために被ばく線量が大きくなるなどの問題があった。

そこで、それらの問題を解決すべく、撮像装置としてダイナミックフラットパネルを用いた呼吸同期照射システムの研究・開発を進めている。

ダイナミックフラットパネルは200μm程度の間隔で半導体検出器を平面上に並べたものであり、歪みのない高画質画像を高速で撮影できるという利点をもつ。

また、透視用X線も連続的ではなくパルス状に照射することで被ばく線量が軽減される点も本システムの特徴。

システム構築にあたっては、X線と撮影装置を同期させる技術、撮影した画像を高速にコンピュータに転送する技術などさまざまな技術が必要となるが、その中でも特に重要となるのが、腫瘍の位置を自動的にトラッキングする際のアルゴリズム。

腫瘍の呼吸性移動は典型的には1秒で1cm程度であるため、1mmの精度を出すためには、一連の処理を100msec未満で、位置判定精度も1mm未満で行う必要があり、いかに「処理速度」と「位置精度」の双方を向上させるかが問題となる。

現在、試験段階として、ダイナミックフラットパネルを用いて動きのあるファントム (模型) を撮影した画像などを用いてトラッキング精度の評価を済ませており、「位置精度」としてはおおむね1mm以下となっているという。

また、「処理速度」に関しても、アルゴリズムの改善により、研究開始当初に比べ数十倍程度に改善しており、実用に耐える処理速度、位置精度実現の目処がついてるという。

実際のシステムの構築までには、臨床データへの適応や制御システムの構築など、まだ解決すべき課題が残されているものの、臨床応用にむけて着実に研究が進んでいる。放射線医学総合研究所は「高精度の治療の実現を目指し、より一層努力を続けていきたいと思います。」と述べている。

第317回東京レントゲンカンファレンスが開催

26日、第317回となる東京レントゲンカンファレンスが新宿住友ビル47FスカイルームBで開催された。 東京レントゲンカンファレンスは、1971年に放射線科診断医が少なかった関東地域の放射線診断医育成を目的として始められた。1971年の開催以来、絶えることなく続けられており、2007年11月には300回を迎えている。 東京レントゲンカンファレンスの基本構成は、当番施設が持ち寄った教育的な症例を、解答を知らない他施設の放射線科医が読影し、続いてその症例の説明を提供施設が行うというもの。 次回開催は、2010年1月28日(木)に、同じく新宿住友ビル47FスカイルームBで予定されている。

画像診断システムや放射線治療機器より技術者の養成を優先せよ

日本の高齢者人口(65歳以上)は約2800万人、総人口の約20%を占めるようになった。こうした高齢化に伴いガン発生数も60万人になろうとしている。

日本人の年間死亡者数は110万人で、うちガンでの死亡者数は約1/3となっている。単純に差し引きすれば、年間のガン死亡率(ガン死亡数/ガン発生数)は約50%である。逆に言えばガンの50%は治るといえる。

高齢のガン患者は外科手術といった侵襲性の高い治療法ではなく、体に優しい治療を求めている。

日本で放射線治療をうけている人は約20万人(2006年)で、数字自体は増加傾向にあるが、それでも全体の1/4に過ぎない。欧米では全ガン患者の2/3が放射線治療を受けており、先進国の中では最低水準となっている。

2006年6月の小泉内閣の時に「ガン対策基本法」が制定され、2007年に「ガン対策推進基本計画」が策定された。

そのなかで放射線治療医と化学療法医の育成が謳われ、それに基づいて厚生労働省と文部科学省は拠点病院の指定と放射線腫瘍医のプロ養成計画を立てている。

欧米22カ国の放射線治療の統計と比較すると、放射線治療装置については日本も遜色はない。

その一方で、100万人あたりのガン患者発生数で日本は欧米の60%だが、放射線治療医数で欧米の1/5、放射線技師の数で3/10、放射線物理士の数で1/10にすぎず、日本の放射線治療は1歩後れているといわざるをえない。

厚生労働省は超高価で、経済効果の高い画像診断システムや放射線治療機器の導入支援には熱心だが、一方で肝心のマンパワー(放射線科医、放射線技師、放射線物理士)の養成が医療費削減方針の対象になるなど、大きな遅れとなっている。