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ダイナミックフラットパネルを用いた呼吸同期治療の高精度化、放射線医学総合研究所

放射線治療の高精度化のためには、放射線を可能な限り正確に腫瘍に当てることが重要です。

しかしながら、腫瘍が肺や肝臓などにある場合、呼吸の影響のために腫瘍の動きが大きく、ときには2cm程度になることもある。

放射線医学総合研究所(文部科学省所管の独立行政法人)では、この呼吸による腫瘍の動きを最小限に抑えるため、患者体表面の動きにより呼吸の状態を観測し、呼気のタイミングに合わせて照射する「呼吸同期照射」を行っている。

しかし、最近の研究により、体表面の動きと腫瘍の動きが必ずしも一致しない場合もあることが分かってきた。

また、特に、重粒子線は線量集中性が高いために、腫瘍位置の誤認が治療効果に与える影響が大きい。

このため、体表の動きに頼るのではなく、照射中にX線透視により直接腫瘍の動きを観測し、その動きに同期して照射するシステムが望まれる。

そのようなシステムはすでに存在しますが、そこでは、用いられる撮像装置の性質上、画質にボケや歪みがあったり、またX線を連続的に照射するために被ばく線量が大きくなるなどの問題があった。

そこで、それらの問題を解決すべく、撮像装置としてダイナミックフラットパネルを用いた呼吸同期照射システムの研究・開発を進めている。

ダイナミックフラットパネルは200μm程度の間隔で半導体検出器を平面上に並べたものであり、歪みのない高画質画像を高速で撮影できるという利点をもつ。

また、透視用X線も連続的ではなくパルス状に照射することで被ばく線量が軽減される点も本システムの特徴。

システム構築にあたっては、X線と撮影装置を同期させる技術、撮影した画像を高速にコンピュータに転送する技術などさまざまな技術が必要となるが、その中でも特に重要となるのが、腫瘍の位置を自動的にトラッキングする際のアルゴリズム。

腫瘍の呼吸性移動は典型的には1秒で1cm程度であるため、1mmの精度を出すためには、一連の処理を100msec未満で、位置判定精度も1mm未満で行う必要があり、いかに「処理速度」と「位置精度」の双方を向上させるかが問題となる。

現在、試験段階として、ダイナミックフラットパネルを用いて動きのあるファントム (模型) を撮影した画像などを用いてトラッキング精度の評価を済ませており、「位置精度」としてはおおむね1mm以下となっているという。

また、「処理速度」に関しても、アルゴリズムの改善により、研究開始当初に比べ数十倍程度に改善しており、実用に耐える処理速度、位置精度実現の目処がついてるという。

実際のシステムの構築までには、臨床データへの適応や制御システムの構築など、まだ解決すべき課題が残されているものの、臨床応用にむけて着実に研究が進んでいる。放射線医学総合研究所は「高精度の治療の実現を目指し、より一層努力を続けていきたいと思います。」と述べている。

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