マンモグラフィー(マンモ)は、「石灰化」を小さなものでも捉えることができ、ごく早期の乳癌発見にも有効なのが特長。
だが、若い人は乳腺の密度が大きく、マンモではこの部分が白く見えてしまうため、同様に白く見える石灰化や腫瘤を見つけるのは難しい場合がある。一般的に年齢とともに乳腺は脂肪に変わり、黒く見えるようになり、白く見える石灰化との区別が容易になることで、診断しやすくなる。
一方、石灰化の検出能力は劣るが、年齢に関係なく一様の画像が得られるのが超音波診断だ。
超音波診断について、中島康雄(聖マリアンナ医大教授、放射線医学)は「脂肪は白く、腫瘤は黒く写るので、若い人でも見つけるのは比較的簡単。マンモでは診断できないガンが一目瞭然の場合もある」と話す。
また、超音波診断には、放射線被曝の問題や、マンモ検査時のように乳房が圧迫されることによる痛みもない。
しかし、超音波診断は検査者が探触子(プローブ)という検査器具を乳房に当て、リアルタイムで生成される超音波画像を見ながらリアルタイムで検査を行う必要があるため、結果は検査者の経験や技量に左右されるという問題点があった。
DICOM画像データ等として残す場合も、超音波検査全体ではなく、検査者が必要と判断した部分的な情報だけを保存する。
この点について中島教授は「検査者が必要と判断した情報だけを保存し、あとは破棄してしまうため、再現性にも乏しい」と話す。
そこで開発されたのが「自動ボリュームスキャナー」である。
長さ約15センチのプローブがセットされた箱状の器具を、あおむけに寝た人の乳房の上にセットすると、プローブが自動的に約17センチ平行移動し、深さ約6センチまでのデータを取得し、すべてを保存する。
検査時間も従来の1/3から1/3と短時間で済む。
また、通常の超音波で見られる断面以外に、乳房を正面からとらえた「冠状断面」も表示できるため、ガンが周囲の組織に広がる浸潤の診断にも役立つとされる。
中島教授は「規格化した画像を保存でき、後から何度でも評価できる。今後はX線CTなどと同様、保存された画像からがんを見つけ、治療の必要性などを判断する『読影』が重要になる」と指摘、読影医の集中化や2次読影、3次読影の広まり、コンピューターによる診断支援が進めば精度が向上していくと予想する。
聖マリアンナ医大は世界の7施設による国際共同研究に参加し、この新超音波診断装置の有効性を評価していくという。