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放射性薬剤の注射による緩和治療

癌が骨に転移して生じる骨の痛みを、放射性の薬剤を注射して和らげる治療が実施されている。抗がん剤との併用や、副作用に十分な注意がいるが、骨転移が多く、ほかの方法では痛みが抑えられない場合に有用という。

この治療を2008年から始め、西日本では有数の実施実績がある近畿大学付属病院(大阪府大阪狭山市)高度先端総合医療センターによると、骨転移が起こると、そこでがん細胞が増えて周りの神経に触れたり、がん細胞が刺激性の物質を出したりして痛みが出る。

よく見られるのは骨盤や脊椎(背骨)への転移。「座れない」「歩けない」「眠れない」などの症状に悩まされ、気分の落ち込みや食欲の減退も招くという。

治療に使う薬剤には放射性の「ストロンチウム89」が含まれ、これが患部で放出するベータ線という放射線が、がん細胞の活動を抑え、刺激性の物質も減らして痛みを抑えると考えられている。

ストロンチウム89はカルシウムと同族の物質。「がんが転移した骨ではカルシウムの吸収が活発なため、ストロンチウム89もカルシウムと同じように骨に多く集まり、長くとどまる」と担当の細野真近畿大教授(腫瘍核医学)は解説する。

対象は、乳がんや前立腺がん、肺がんなどさまざまな固形がんの骨転移。転移が多くあちこちが痛み、モルヒネなどの鎮痛剤、抗がん剤や、体の外から放射線を当てる治療で痛みが抑えられないことなどが治療適用の基準になる。普段カルシウム剤を使っている患者には、ストロンチウム89の骨への集積を邪魔されないよう、注射前2週間は使用を控えてもらう。

この緩和治療は通常、日帰りで行い、薬剤を静脈に注射する。患部でのベータ線の影響範囲は最大約8ミリ。注射後1~2週間で痛みが和らぎ始めるが、4週間ほどかかる場合も。効果は3~6カ月続く。有効率は70~80%との臨床試験データがある。

5~15%の患者では2~3日後に一時的に痛みが増し、数日続くことがあり、この間は痛み止めを増量することもあるという。

主な副作用は、血液を造る働きが低下する「骨髄抑制」。血液中の白血球、血小板が20~30%程度、重い場合はそれ以上減少する恐れもあるため、実施前に採血し、血液の機能が一定以上確保されているかを確かめる。治療後も定期的に検査する。

骨髄抑制は、抗がん剤や体外からの放射線治療でも起きることがあるため、これらとの併用には十分注意が必要。がん自体に対する治療ができなくなる場合もある。

余命が非常に短い患者や、白血病や骨髄腫、悪性リンパ腫などの患者は対象外となる。

注射後は、2日~14日で、骨に集まらなかったストロンチウム89のほとんどが尿から排出される。それまでは尿や血液中に残るため、家族や介護者は、患者の衣類やシーツ類などの取り扱いに注意が必要だ。

治療には保険が適用され、近畿大病院では患者の実費負担は診察料も含め10万円以内としている。

細野教授は「穏やかに暮らしてもらったり、仕事に復帰してもらったりと、がん患者の生活の質を保つのに有用な手法だ」と話している。

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