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重粒子線がん治療、放射線医学総合研究所

医学の進歩は、年間30万人以上もの命を奪う癌に対しても、果敢に挑戦し続けている。

癌の治療の柱は、手術、抗がん剤、放射線の3つである。その中でも今もっとも注目されているのが放射線を進化させた「重粒子線がん治療」だ。

この新しい治療法は、一般的な放射線治療で用いるX線やガンマ線ではなく、巨大な加速器を用い、炭素の原子核を光の約8割の速度に加速させることでエネルギーを高め、照射もとい衝突させることで癌細胞のみを死滅させる。

その医療用重粒子加速装置を世界で初めて建設し、1994年から治療を行っているのが、独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院(千葉県千葉市稲毛区穴川)だ。治療実績は、もちろん世界でトップである。

「癌細胞のみを標的として、正常な細胞にダメージを与えずに、照射回数も少ない治療が行えます。1期の肺がんは、1日1回の照射で済みます。患者さんにとって負担の少ない治療法ともいえるでしょう」とは、放射線医学総合研究所の辻井博彦理事。

治療設備は、120メートル×65メートルと巨大だ。広い設備の中で重粒子が加速され、患部に照射される。照射時間はわずか2~3分程度。ただし、癌の種類によって照射回数は異なる。一般的な放射線治療で30回以上の照射が必要な前立腺がんも、重粒子線がん治療では16回。患者への負担が少ないのが特徴だ。

適用は、手術が難しいケースも含め、肺がん、肝がん、頭頸部がん、前立腺がん、悪性黒色腫、骨軟部肉腫、直腸がんの手術後再発など。その症例は、15年間で5000例を超えるそうだ。

「すべての癌に適用するものではありませんが、1カ所にとどまっているような局所進行の癌に威力を発揮します。たとえば頭頸部がんは顔の変形なしに治療が可能です。切らずに治す選択肢の一つとしての役割も重粒子線がん治療にはあるのです」。

こう話す辻井理事は、1989年に世界で初めて深部癌に対して、水素の原子核・陽子を高エネルギーで加速した陽子線治療を行ったことのある放射線治療の権威。手術や抗がん剤、放射線といった従来の治療では難しい症例を数多く診てきた。そういう人々を救うべく重粒子線がん治療でも世界をリードし続ける。

辻井理事長は「患者さんにとってベストな治療は何か。受診された患者さんは、それを知る良い機会にもなっていると思います」とも話す。

2003年10月から重粒子線がん治療は先進医療として認められた。がん治療のひとつの選択肢として道が開けている。その普及に向けて今後も力を発揮し続けるだろう。

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