理研、光子レベルの分解能を持つ高感度電磁波センサの開発に成功、医用画像への応用に期待
理化学研究所(文部科学省所管の独立行政法人)は、カーボンナノチューブ(CNT)とGaAs/AlGaAsを組み合わせ、電磁波の最小単位である光子(粒子)を数個レベルで捉えることが可能な高感度テラヘルツ(THz:1,012Hz)電磁波の検出器の開発に成功したと発表した。
近年、物質中の電子、生体系高分子、天体系星間物質などから発する極微弱なTHz電磁波の検出が、物質の新現象・新機能の発見、生命活動や宇宙創生の謎の解明につながるものとして注目を集めている。
また、X線を用いて物質や生体内部を観察するレントゲン写真(XPやCR、CTなど)に代わる画像イメージングとして、放射線被曝の恐れがなく安全とされるTHz電磁波の透過、あるいは反射を活用した技術の開発が、さまざまな産業への応用に向け模索されている。とくに医療分野ではCRやCTなどに代わる医用画像として期待されている。
以上のことより、高性能で高感度THz検出器が、重要な日本の基盤技術要素になるとして開発が要望されていた。
現在市販されているTHz検出器は、THz電磁波を受光すると素子の温度が上昇し、それを電気抵抗の変化として読み出すボロメータがよく使用されているが、温度上昇から大きな電気抵抗変化を取り出すかが重要となるものの、一般にその効率は低く、必然的に感度の向上が困難であった。
理研の研究チームは、高電子移動度半導体による基板上に、CNTによるトランジスタを搭載するという新構造を基にTHz検出器を開発。この構造により、高電子移動度半導体でTHz電磁波を効率よく吸収し、CNTで高感度に信号を読み出すということが可能となった。
THz電磁波の吸収部は、高電子移動度半導体の特性である散乱の少ない高い電子移動度を有するため、THz電磁波を効率よく吸収することが可能。また、検出信号の読み出し部は、CNTによる単電子トランジスタを採用。極微細構造による高温での動作を実現している。
THz吸収と信号読み出し、それぞれの役割を分担したことで、電磁波の最小単位である光子を数個のレベルで捉えることが可能となり、ボロメータ比で数桁(数倍ではない)高い感度でTHz電磁波を検出することができるようになった。
試作した素子に強度約1nW(ナノワット)、周波数1.6THzのTHz電磁波を照射しながら、CNTを流れる電流を測定。トランジスタのゲート電圧に対する電流の依存性を測定した結果、THz電磁波を照射すると、電流ピークの位置が-169mVから-165mVへシフトすることを見いだした。
なお、今回開発された検出器は、高感度である上に、磁場依存性の測定から飛来するTHz電磁波の周波数も同時に測定することが可能であることも従来のボロメータには無い特長。検出器自体で周波数を測定することで、分光も同時に行うことができ、THz電磁波計測の応用範囲を広げることが可能になるとしている。
理研では今後、多数の検出器を2次元状に配置した高解像度カメラの開発を目指すとしている。同カメラが開発されると、THz電磁波を活用したカメラによる、ビデオ撮影が可能になることとなる。
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